社会福祉法人で固定資産税が課税となるケース(基礎編)

社会福祉法人で固定資産税が課税となるケース(基礎編)

社会福祉法人は根拠法に公金を受け入れるが故の特殊性があり、税法は税制優遇故の租税回避防止の側面もあるので、規定の構造が複雑で理解が難しいのが特徴です。

固定資産税は、優遇税制の中心的な規定ですが、あまりよく考えずに非課税が通ってしまっているケースが多く、筆者が社会福祉法人の職員の時もそうでしたが、非課税の理由をよく考えたことがない方も多いと思います。

ただ、時々課税されて騒ぎになります。今回の記事で、非課税が当たり前でないということが理解ができて、万が一、課税上のトラブルになった時に助けになると思います。

固定資産税の基本知識

(1)毎年1月1日現在で所有している対象固定資産に所有者が課税されます。

(2)市町村等に納付する地方税です。

(3)自治体が税額を計算して決定する賦課課税です。

(4)課税対象資産は、土地・家屋・償却資産です。

(5)償却資産は、土地・家屋以外の減価償却資産です。

(6)課税標準額に対し、税率(原則1.4%)を掛けた額が税額となります(別途都市計画税)。

   しかし、市町村は必要に応じて、1.4%と異なる税率を条例で定めることができます。

社会福祉法人で課税されない固定資産

(1)ソフトウエアや自動車など償却資産に含まれない資産

(2)免税点未満の少額資産

(3)地方税法348条の非課税規定に該当する資産。

   詳細は、別記事の固定資産税の非課税編をご覧ください。社会福祉法人で固定資産税が課税されないケース(非課税規定編)|立花淳一税理士事務所

課税される固定資産とは?

社会福祉法人の固定資産税は非課税規定に該当すれば課税されませんので、別記事の非課税の規定を理解することが究極的には必要です。

しかし、消費税同様に非課税規定が読みにくいので、実務的には、非課税を前提として課税されるケースを覚えてしまった方が分かりやすいのでお勧めです。

1.公益事業や収益事業で使用する固定資産

非課税の条文構造が、「小規模保育・児童福祉施設・認定こども園・老人福祉施設・障害者支援施設・その他社会福祉法の社会福祉事業の用に供する固定資産で一定のもの」となっていますが、基本的に社会福祉法上の社会福祉事業が並んでいますので、公益事業や収益事業で使用する固定資産は別規定がない限り課税されます。

2.条文解釈の落とし穴による課税

社会福祉法上の社会福祉事業は非課税という考えは間違っていませんが、それだけだと落とし穴に落ちる可能性があります。

社会福祉法の2条の社会福祉事業には除外規定があって、例えば以下のようなものは除かれます。除かれる場合には、社会福祉事業の用に供するという要件が満たされなくなりますので、課税されることになります。

(1)実施期間が6月を超えない事業

(2)常時保護を受ける者が、入所させて保護を行うものにあっては5人、その他のものにあっては20(政令で定めるものにあつては、10人)に満たないもの

3.類似事業でも非課税・課税・減免が分かれるケース

児童福祉法の6条の3を例に解説します。

(1)児童福祉法6条の3の10小規模保育は第二種社会福祉事業ですが定員が9名以下の場合は公益事業になります。公益事業部分は課税かと思うのですが、社会福祉事業を要件とする規定とは別の非課税規定に上がっていますので社会福祉事業でなくても非課税になります。

(2)児童福祉法6条3の9の家庭的保育事業・児童福祉法6条3の11の居宅訪問型保育事業は公益事業ですので課税されますが、自治体により通常50%の減免手続きがあります。

(3)児童福祉法6条3の12の事業所内保育事業は定員が6名以上なら非課税で、5名以下なら課税となり、課税となった場合は、自治体により通常50%の減免手続きがあります。

(4)児童福祉法6条3の3の子育て短期支援事業は社会福祉事業の非課税項目にありますので非課税です。

4.遊休資産や事業共用前資産の課税

社会福祉施設の中にある資産で、何らかの事情で事業に使用されていない資産は非課税の要件を満たさなくなるので課税されます。

また、新たに社会福祉事業を開設するために購入した資産で、建設中等まだ1月1日時点で事業に使用されていない資産も一旦課税されます。非課税にするためには、その後に事業共用した時点で、還付申請する必要があります。

5.社宅や福利厚生用の資産の課税

従業員の社宅用の土地や建物は、社会福祉事業の用に供しているとは言えないため課税されます。

また、施設内であっても福利厚生目的や接待交際目的の資産についても、非課税事業に共用していることが明らかでないものについては課税される可能性があります。

6.社会福祉法人に貸した固定資産の課税

固定資産税は所有者に課税されます。社会福祉法人が第三者から借りた固定資産を非課税規定にある社会福祉事業の用に供した場合はどのような課税関係になるか?

有償なら課税されます。無償なら課税されません。

空き家や遊休資産対策で、固定資産税を納付するのが大変という方は、社会福祉法人に非課税規定の社会福祉事業に使用してもらうことを条件に無償で貸せば、節税ができることになります。

まとめ

社会福祉法人の固定資産税は多くの場合には非課税になります。しかし、非課税の根拠は「社会福祉法人だから」ではなく、「社会福祉法人が非課税になる事業の用に使っているから」です。

非課税になる事業に供していなければ、どのような場合も課税されてしまいます。

また、非課税にならずに一旦課税になった資産でも自治体によっては減免申請できる資産もあります。

社会福祉事業だけを行っている社会福祉法人は、それほど心配はありませんが、公益事業や自治体からの委託事業を行っている法人は、自法人購入資産については非課税にならない資産がある可能性が高いので、もう一度固定資産について見直してみましょう。