社会福祉法人で固定資産税が課税されないケース(非課税規定編)
社会福祉法人の固定資産税は結果的に非課税が多く、実務界で非課税の理由についてはあまり意識していない印象がありますが、今回は、一般的な社会福祉法人の固定資産税が非課税になる理由をご紹介します。
条文ベース(令和7年3月時点)で説明しますので、条文が苦手な方は別記事の基礎編で全体の概要と事例を抑えて下さい。
目次
1.償却資産から除かれるもの
償却資産は、以下のものは含まれません。
(1)耐用年数1年未満又は取得価格10万未満で一時に経費にしたもの。
(2)取得価格20万未満の資産のうち3年間で償却したもの。
(3)リース資産で取得価格が20万未満のもの。
(4)ソフトウエアなどの無形固定資産。
(5)自動車税・軽自動車税の対象となる自動車などの資産。
引用元:固定資産(償却資産)申告の手引き R7_shinkokutebiki_mihiraki
2.免税点
同一市町村の資産で課税標準が以下のものは少額が理由で課税されません。
(1) 30万未満の土地
(2) 20万未満の家屋
(3) 150万未満の償却資産
引用元:固定資産(償却資産)申告の手引き R7_shinkokutebiki_mihiraki
3.非課税規定
非課税の条文構造は以下の3段階となっており、該当する事業に使用した固定資産は非課税資産として課税されません。
(1)地方税法348条
(2)地方税法施行令49条15
(3)地方税法施行規則10条7-3

1. 地方税法第348条(抜粋)
固定資産税の非課税対象事業で社会福祉法人に関係しそうな個所を抜き出します。
十の二 社会福祉法人が児童福祉法第6条の3第10項に規定する小規模保育事業の用に供する固定資産
十の三 社会福祉法人が児童福祉法第7条第1項に規定する児童福祉施設の用に供する固定資産で政令で定めるもの(次号に該当するものを除く。)
十の四 社会福祉法人が就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律第2条第6項に規定する認定こども園の用に供する固定資産
十の五 社会福祉法人が老人福祉法第5条の3に規定する老人福祉施設の用に供する固定資産で政令で定めるもの
十の六 社会福祉法人が障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第5条第11項に規定する障害者支援施設の用に供する固定資産
十の七 第10号から前号までに掲げる固定資産のほか、社会福祉法人が社会福祉法第2条第1項に規定する社会福祉事業(同条第3項第1号の2に掲げる事業を除く。)の用に供する固定資産で政令で定めるもの
十の九 介護保険法第115条の47第1項の規定により市町村から同法第115条の46第1項に規定する包括的支援事業の委託を受けた者が当該事業の用に供する固定資産
十の十 児童福祉法第34条の15第2項の規定により同法第6条の3第12項に規定する事業所内保育事業の認可を得た者が当該事業(利用定員が六人以上であるものに限る。)の用に供する固定資産
2.地方税法施行令49条15項(抜粋)
政令にある地方税法348条第2項第10号の7に規定する政令で定める固定資産で社会福祉法人に関係しそうな個所を抜き出します。
四 社会福祉法人が実施する社会福祉法第二条第三項第九号に掲げる事業の用に供する固定資産で総務省令で定めるもの
五 社会福祉法人が実施する社会福祉法第二条第三項第四号の二に掲げる福祉ホームを経営する事業、同項第五号に掲げる身体障害者福祉センター、補装具製作施設若しくは視聴覚障害者情報提供施設を経営する事業又は同項第十号に掲げる事業の用に供する固定資産で総務省令で定めるもの
六 社会福祉法人が実施する社会福祉法第二条第三項第四号に掲げる老人居宅介護等事業、老人デイサービス事業、老人短期入所事業、小規模多機能型居宅介護事業、認知症対応型老人共同生活援助事業又は複合型サービス福祉事業
七 社会福祉法人が実施する社会福祉法第二条第三項第二号に掲げる小規模住居型児童養育事業の用に供する固定資産で総務省令で定めるもの
八 社会福祉法人が実施する社会福祉法第二条第三項第二号に掲げる児童自立生活援助事業
九 社会福祉法人が実施する社会福祉法第二条第三項第二号に掲げる障害児通所支援事業、障害児相談支援事業、放課後児童健全育成事業、子育て短期支援事業、乳児家庭全戸訪問事業、養育支援訪問事業、地域子育て支援拠点事業、一時預かり事業、病児保育事業、子育て援助活動支援事業、親子再統合支援事業、社会的養護自立支援拠点事業、意見表明等支援事業、妊産婦等生活援助事業、子育て世帯訪問支援事業、児童育成支援拠点事業、親子関係形成支援事業若しくは児童の福祉の増進について相談に応ずる事業、同項第二号の三に掲げる事業、同項第四号の二に掲げる一般相談支援事業若しくは特定相談支援事業、同項第五号に掲げる身体障害者の更生相談に応ずる事業若しくは同項第六号に掲げる知的障害者の更生相談に応ずる事業の用に供する固定資産で総務省令で定めるもの又は同項第四号の二に掲げる障害福祉サービス事業、移動支援事業若しくは地域活動支援センターを経営する事業、同項第五号に掲げる身体障害者生活訓練等事業若しくは手話通訳事業若しくは同項第十二号に掲げる事業の用に供する固定資産
3.地方税法施行規則10条7-3(抜粋)
施行規則の各条項のうち社会福祉法人に関係しそうな個所を抜き出します。
8 政令第四十九条の十五第二項第七号に規定する小規模住居型児童養育事業の用に供する固定資産で総務省令で定めるものは、居室その他これに類する施設の用に供する固定資産とする。
10 政令第四十九条の十五第二項第九号に規定する障害児通所支援事業の用に供する固定資産で総務省令で定めるものは、児童福祉法第六条の二の二第二項に規定する児童発達支援、同条第三項に規定する放課後等デイサービス及び同条第五項に規定する保育所等訪問支援を行う事業の用に供する固定資産とする。
11 政令第四十九条の十五第二項第九号に規定する放課後児童健全育成事業、子育て短期支援事業、一時預かり事業及び児童育成支援拠点事業の用に供する固定資産で総務省令で定めるものは、居室その他これに類する施設の用に供する固定資産とする。
12 政令第四十九条の十五第二項第九号に規定する乳児家庭全戸訪問事業、養育支援訪問事業、意見表明等支援事業及び子育て世帯訪問支援事業の用に供する固定資産で総務省令で定めるものは、詰所その他これに類する施設の用に供する固定資産とする。
13 政令第四十九条の十五第二項第九号に規定する病児保育事業の用に供する固定資産で総務省令で定めるものは、居室、詰所その他これに類する施設の用に供する固定資産とする。
14 政令第四十九条の十五第二項第九号に規定する子育て援助活動支援事業の用に供する固定資産で総務省令で定めるものは、専ら児童福祉法第六条の三第十四項に規定する連絡及び調整等の用に供する固定資産とする。
15 政令第四十九条の十五第二項第九号に規定する障害児相談支援事業、地域子育て支援拠点事業、親子再統合支援事業、親子関係形成支援事業、児童の福祉の増進について相談に応ずる事業、養子縁組あつせん事業、一般相談支援事業、特定相談支援事業、身体障害者の更生相談に応ずる事業及び知的障害者の更生相談に応ずる事業の用に供する固定資産で総務省令で定めるものは、相談室その他これに類する施設の用に供する固定資産とする。
16 政令第四十九条の十五第二項第九号に規定する社会的養護自立支援拠点事業及び妊産婦等生活援助事業の用に供する固定資産で総務省令で定めるものは、居室、相談室その他これに類する施設の用に供する固定資産とする。

まとめ
一般的に社会福祉法人の固定資産税が非課税になる規定を紹介しました。 ポイントは、非課税の条文構造を理解することと、調べたい事業の根拠法を把握することです。
ただ、行う事業の根拠法が、例えば、児童福祉法の〇条の事業だから非課税という書き方と、社会福祉法の〇〇社会福祉事業だから非課税という書き方があり、調べたい事業が、児童福祉法の事業=社会福祉事業の場合もあれば、児童福祉法の事業≠社会福祉事業の場合もあるので、どちらの法的根拠をもって、どこの非課税規定で調べるべきか、分かり難いことが問題です。
もし現在、非課税が認められていれば、特に問題になることはありませんが、新規で事業を開始したり、税務調査など時々問題になりますので、非課税の理由は知っておくに越したことはありません。
調べる際に、迷子にならないように、お気を付け下さい。