社会福祉法人の住民税や事業税が免除されるケースは?
税金は約30種類以上あると言われていますが、社会福祉法人にとって重要な税金は国税では法人税と消費税、地方税では住民税と事業税(所在地によっては事業所税)と言って良いでしょう。
今回は、社会福祉法人の住民税や事業税が非課税になる可能性について考えてみたいと思います。
目次
初めに意識して頂きたい事
社会福祉法人は収益事業を行っていなければ、地方税がかからないと思って頂いて良いと思います。
もし、収益事業を行っていたとしても非課税の規定が用意されています。 順番に見ていきましょう。

住民税が非課税になるケース
まず最初に住民税。
1.住民税って何?
住民税は、地域の行政サービスに対して支払うものであり、各都道府県と市町村へ納める税を合わせた呼び名です。
社会福祉法人が納める法人住民税は、法人が事業所を置く地方自治体に納める税で、「都道府県民税」と「市町村民税」があります。
法人住民税は法人税割または均等割という2つの方法で計算し、事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内に納税しなければなりません。社会福祉法人は必ず5月末になり、延長申請をすれば6月末になります。
2.社会福祉法人の住民税が非課税になる可能性
(1)社会福祉法人は収益事業を行っていなければ、法人税割も均等割りも非課税です。
(2)収益事業を行っている場合でも、赤字(所得金額がない)場合は同様に非課税です。(株式会社の場合は、赤字でも均等割りは払うので思い違い注意です。)
(3)社会福祉法人の独特の規定で、いわゆるみなし寄附により、収益事業の所得金額のうち90%以上を社会福祉事業に充てている場合も非課税になります。(非課税判定票を提出する必要があります。)
(4)社会福祉法人は金融機関で手続きをすれば、銀行預金などで源泉される利子割も非課税にできます。
事業税が非課税になるケース
次に事業税。
1.事業税って何?
法人事業税とは、法人が行う事業に対して課税される税金で、納期限は事業年度終了の日から2か月以内です。社会福祉法人の場合は必ず5月末となり、延長申請をすれば6月末になります。
法人事業税の税率は変動します。資本金1億円以下の普通法人等の場合は、赤字であれば納付の必要はありません。
2.社会福祉法人の事業税が非課税になる可能性
(1)収益事業を行っていなければ非課税です。
(2)収益事業を行っていても赤字(所得金額がない)場合は非課税です。
(3)住民税の様な社会福祉法人独特の非課税規定はありません。
事業所税が非課税になるケース
最後に事業所税。
1.事業所税って何?
事業所税は、人口30万人以上の都市等が都市環境の整備及び改善に関する事業に要する費用に充てるための目的税で、特定の市区町村だけに課せられる税金です。
2.課税の方法と免税点
事業所税には資産割と、従業者割があります。
資産割については床面積に課税され、従業者割については従業者給与総額に課税されます。
事業所税には中小企業等の負担を排除するために免税点が設けられております。免税点以下となった場合には事業所税は課税されません。
免税点は資産割及び従業者割ともに事業所税の課税団体となる指定都市毎に判定します。
3.社会福祉法人の事業所税が非課税になる可能性
例えば、社会福祉事業を行う社会福祉施設や、児童福祉法に規定する家庭的保育事業などは非課税規定により非課税となります。
固定資産税の非課税規定に近いイメージですが、違いもあります。

まとめ
住民税、事業税及び事業所税の非課税の考え方について見てきました。
収益事業を行っていない社会福祉法人は意識する必要はありませんが、収益事業を行っている場合は意識する必要があります。
ここで言う収益事業は社会福祉法上の収益事業でなく法人税法上の収益事業の考え方で、対象が異なる場合があります。
新たに収益事業を開始した社会福祉法人は、国に法人税の開始届だけでなく都道府県や市区町村に地方税の開始届も必要です。
また、社会福祉法人は決算理事会が3か月以内ですので、法人税の申告は1か月の延長申請が可能です。この場合は、住民税や事業税の延長申請も忘れずに行いましょう。
まれに、非課税規定があるにも関わらず、自治体から課税なのでは?という課税漏れ嫌疑の照会が来ることがあります。「でもやっぱり非課税だった」の場合もありますので、もし困ったら税理士に相談して冷静に対処して下さい。