社会福祉法人に土地等を寄付した場合の税制優遇(措置法40条)とは?

社会福祉法人に土地等を寄付した場合の税制優遇(措置法40条)とは?

社会福祉法人は非課税法人というイメージがあると思います。

当然、ほとんどの規定は社会福祉法人の税金が優遇されるということなのですが、社会福祉法人に関係した外部の人が税制優遇を受けられるという規定もあります。

今回は、税理士がよく質問される、措置法40条と言われる、資産家である個人が社会福祉法人に土地等を寄付した場合に課税が優遇される特例を紹介します。

税制優遇の略語

税制優遇の論点は、一般的な名称として略語のようなものが付く時があります。

土地等を寄付した場合の税制優遇は、租税特別措置法40条1項の後段に根拠があることから、「措置法40条」とか「40条」などと言われることがあります。

一方、別規定で、土地を売却した場合の課税の特例は、租税特別措置法33の4に根拠がありますが、「措置法33条」とは呼ばれず、「5,000万控除」などと呼ばれることが多いようです。

今回は、土地シリーズでは比較的有名な、前者の「措置法40条」規定を解説します。

措置法40条規定とは?

社会福祉法人は、歴史的には資産家からの寄附を元手に事業を行ってきました。制度的にも寄付を想定しています。株式会社と違い出資を受け入れられないためです。

例えば、貸借対照表の純資産の部の基本金という勘定科目は、株式会社でいう資本金に似ている概念で、社会福祉法人の事業の元手部分と言われますが、法人が基本財産の寄附を受け入れた時に計上する科目です。

寄附ですから、反対給付や対価性のない性格になります。したがって、所有性や譲渡性もありません。

資産家が私財である土地を社会福祉法人に寄附し、その上に施設整備の補助金により建物を建設するのは、典型的な施設開設のパターンですが、ここで問題になるのは、いわゆる「みなし譲渡課税」です。

「みなし譲渡課税」とは、個人が土地などの財産を法人に寄附した場合、これらの財産は寄附時の時価により譲渡があったものとみなされ、これらの財産の取得時から寄附時までの値上がり益に対して所得税が課税されてしまうことです。

国税庁は、「これは個人から法人に土地などの財産が無償で移転するときに、個人に帰属する値上がり益に対する所得税を精算するための制度的要請によるものです。」と説明しています。

この9,000万円の値上り益の課税は厄介です。一般的に、土地は時の経過とともに高額になる傾向があります。先祖代々伝わるようなものを相続したり、長期的保有を目的に購入したりしたものが多いと思いますが、このような土地は取得価格(簿価)が比較的低く、現在の時価はそれより高いというケースが多いと思います。

このような土地の簿価と時価の差は含み益となり、たとえ無償で寄附した場合でも、みなし譲渡として課税されてしまうのです。 もし、通常の売却(譲渡)した後なら、売却代金である1億円というお金を受け取りますので、課税されてもそのお金の一部で納税できるので問題ないと思いますが、寄附の場合、売却代金である対価を受け取りませんので納税資金が発生しません。したがって、納税資金を別途用意しなければならないことになります。これでは、寄附者の負担が重すぎて、寄附を妨げてしまうことになりかねません。

社会福祉法人は寄付を想定した制度設計をしていますので、寄付を妨げることは避けたいのです。そこで、国は、社会福祉法人に寄附した場合には、このみなし譲渡益部分を別規定で非課税にする必要があったわけです。

税の優遇は、デメリットもあります。この適用を受けるためには、税務署側の承認を受ける必要があり、寄附をする個人も受ける法人も手続きがかなり煩雑なことです。

社会福祉法人の方々は、その法人の規程作成の際に参照したモデル定款やモデル規程に租特法第40条の適用を受ける法人例と受けない法人の選択をしたと思いますが、この論点の規制のことです。

規程の相違内容は、税制優遇を受ける代わりに規制を強化する趣旨ですので、この適用を受ける法人は申請時だけでなく、将来に渡ってより規制を受けることになります。

例えば、予算は通常、理事会の可決時事項ですが、措置法40条適用法人は評議員会決議事項に格上げされるなどがあります。

優遇の対象は、寄付者が本来払わなければならない税金で、非課税の要件が土地を社会福祉事業に使う事ですので、その土地が社会福祉事業に使われなくなった(非課税の要件を満たさなくなった)ならば、その時に寄付者又は受け入れた社会福祉法人のいずれかに課税されます。

この性質から、社会福祉事業に使われなくなるまでの課税の繰り延べ規定と説明する方もいます。その説明は、理論上は合っているのですが、実務上は、税の取戻しが必ず起こる課税の繰り延べ規定とは分けて考えた方が良さそうです。

例えば、寄付された土地を社会福祉法人が売却した場合は、社会福祉事業に使わなくなりますので取り消し事由に該当し、土地を社会福祉事業に使用する前の売却なら寄付者に課税、土地を社会福祉事業に使用した後の売却には社会福祉法人に課税されます。

ただ、本来寄付者に課税されるものですので、売却時に寄付者が死亡しており、死亡してから5年を経過したならば、時効が成立し課税権がなくなるという実務事例があります。この場合、税の取戻しが起こらないことになります。

まとめ

(1)個人が社会福祉法人に土地を寄付する場合は含み益には課税されます。

(2)含み益に課税されないために措置法40条の規定が用意されています。

(3)措置法40条の適用を受ける場合、寄付を受けた社会福祉法人は規制を受けます。

(4)非課税とされた含み益部分は課税の繰り延べ的な性格があります。

この規定の適用を受けようとする法人は、二つのパターンがあると想定できます。

一つは、今は寄附者からの要請がありませんが、あらかじめ準備しておくことで、将来に渡って寄附者を募っていきたいと期待するもの。

もう一つは、すでに寄附者から具体的な寄附の要請があり、すぐにでも準備して寄附を受け入れたいと希望するものです。

いずれにしても、規制の内容は法人の理事会や評議員会の運営方法も含み、かなり複雑です。

また、この規定を適用すると、後戻りできない規制を受け続けるというデメリットがあるため慎重に検討すべきでしょう。

当事務所はこの規定の支援を通常の顧問業務とは切り分けして、成功報酬型の支援の可能性がありますので、ご検討の方はごお気軽に相談下さい。

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