認可保育園の30%基準(弾力運用通知)による積立資産の謎
認可保育園は、いわゆる弾力運用通知により、当期末支払資金残高は30%以下にしなければならないという「30%基準」は保育園業界では有名ですね。
2年連続で抵触すると処遇改善の改善基礎分が停止されると言われ、積立資産に積み立てる必要があるということは保育園の関係者の方々は聞いたことがあると思います。
ところで、弾力運用通知は、クリアする段階により規制が緩和される仕組みですが、第一段階では「人件費積立資産」「修繕積立資産」「備品購入積立資産」と3種類の積立が認められている一方で、第3段階では「人件費積立資産」「保育所施設・整備積立資産」の2種類が認められており、積立資産の数が減っています。
積立の範囲が狭くなっていますが、何故でしょうか?今回はその謎を解明します。
目次
弾力運用通知(254号通知)の復習

本記事は社会福祉法人を前提に解説します。
弾力運用通知は、3段階で規制緩和がされています。基礎知識の確認は以下の記事で再確認して下さい。
ズバリ認可保育園の弾力運用通知(254号通知)のポイント!|立花淳一税理士事務所
(1)第一段階=要件1の基本要件7項目の全てを満たしている。
(2)第二段階=【要件1】に加え、別表1のいずれかの事業を実施している。
(3)第三段階=【要件1】と【要件2】に加えサービス向上3項目を満たしている。
積立資産は、上記の段階毎に異なる積立資産の計上が認められています。
実務では、第三段階をクリアする法人がほとんどですので、第一段階や第二段階を意識する必要はないのですが、冒頭にも触れたように、第一段階では3つの積立資産が認められている一方で第三段階は2つの積立資産しか認められていません。
一見積立の種類が減っているように見えますが、実際には取崩しの視点で、段階毎に規制の緩和が行われているのです。

第一段階の積立資産のポイント
| 人件費積立資産 | 人件費の類に属する経費 |
| 修繕積立資産 | 建物及び建物附属設備又は機械器具等備品の修繕に要する費用 |
| 備品等購入積立資産 | 業務省力化機器をはじめ、施設運営費・経営上効果のある物品を購入するため |
第一段階をクリアした場合、上記の3つの積立資産を積立てることが可能で、次年度以降にその積み立てた保育所の経費に充てることができます。 また、目的外の取崩しは、所轄庁との事前協議が必要で、認められた場合のみ可能です。
積立資産と取崩しの関係が1対1になっていることがポイントです。

第二段階の積立資産のポイント
第二段階をクリアした場合、上記の積立資産に加えて、処遇改善等加算の基礎分(以下「改善基礎分」という。)として加算された額に相当する額の範囲内で以下の積立を「保育所施設・設備整備積立資産」として行うことができます。
| 保育所等の建物、設備の整備・修繕、環境の改善等に要する経費及び保育所等の土地又は建物の賃借料の経費に係る借入金(利息部分を含む)の償還又は積立のための支出(保育所等を経営する事業に係るものに限ります。) |
第二段階の「保育所施設・設備整備積立資産」は、積立と取崩しが第一段階のように1対1の関係でなく、修繕や購入など1対複数に使え、借入金の償還を含めて第一段階より使途が自由なことと、所轄庁との事前協議により承認を得れば、同一の設置者が設置する他の保育所等の施設・設備にも充てられることがポイントです。
第一段階より緩和されています。
第三段階の積立資産のポイント

第三段階をクリアすると、以下の積立が可能になります。
| 人件費積立資産 | 人件費の類に属する経費 |
| 保育所施設・設備整備積立資産 | 建物・設備及び機械器具等備品の整備・修繕、環境の改善等に要する費用、業務省力化機器をはじめ施設運営費・経営上効果のある物品の購入に要する費用、及び増改築に伴う土地取得に要する費用に係る積立資産 |
第三段階のポイントは、保育所施設・設備整備積立資産が、1対複数の関係の使い道を保ったまま、処遇改善等加算の基礎分(以下「改善基礎分」という。)として加算された額に相当する額の範囲に限る必要がなく、更に、土地取得のために使えるようになります。積み立てた金額の使途が更に増えました。
第二段階より緩和されています。
また、目的外取崩しの事前協議が、社会福祉法人の場合は理事会決議で行えるようになることです。社会福祉法人にとっては、かなり大きな緩和になります。

その他の注意事項
30%基準の計算の基礎となる委託費は、国の公定価格部分のみとは限りません。東京都の場合は、いわゆる都加算といわれる「東京都保育士等キャリアアップ補助金」と「東京都保育サービス推進事業補助金」を含みますし、市区町村の加算(法外援護)は、含める範囲がその市区町村毎に異なります。
また、委託費収入の 30%を2年連続で超えている場合は、超過額が解消されるまでの間、処遇改善等加算の基礎分全額について加算を停止する可能性が高いと解説されているものが多いですが、正確に言うとそのように表明(解説)している自治体があったことで、「2年連続」という言葉が広まってしまいました。
通知上は、「30%を超えている場合は、計画を作るよう指導を行い、それでもなお、委託費収入の30%を超える場合については、超過額が解消されるまでの間、改善基礎分について加算を停止する。」となっていますので、1年では停止されませんが、何年で停止されるかはそのケースにより自治体の判断というのが正しい解釈です。

まとめ
積立資産の数が減少したのは、積立そのものに規制があったのではなく、使い道(取崩し)の幅が広がったためです。もし何にでも使える積立金であれば、項目は一つの方が使い勝手が良いわけです。
(1)第一段階: 3つの積立資産が「1対1」の関係で対応。
(2)第二段階: 改善基礎分の範囲で広範囲に使える積立資産が計上可能。事前協議により他保育所への流用も可。
(3)第三段階: 土地取得費を含む広範囲な用途に対応。社会福祉法人の場合、目的外取崩しが理事会決議で行える。
(4)委託費の定義: 30%の計算基礎となる委託費は自治体により異なります。抵触時は改善計画が求められ、改善されない場合に加算停止の可能性があります。
30%基準により、積み立てた積立資産は、使い道が決まっているため、黒字の出る拠点は、毎年積立資産が増え、積み立てられたままになりがちです。積立資産は、預金などに拘束され、自由に使うことができないため資金が硬直化します。
利用者に選ばれる保育園になるために、法人全体で資金を有効に活用しようとする場合、必ず工夫が必要になります。
当事務所は、認可保育園の資金活用にたくさんの実績がありますので、資金活用にお困りの社会福祉法人の方はお気軽にご相談下さい。
