社会福祉法人が資金調達する際に税理士が必要な理由5選

社会福祉法人が資金調達する際に税理士が必要な理由5選

株式会社で、税理士に会計参与になってもらうメリットは、計算書類の正確性が担保され、金融機関や取引先の信用がアップし、特に金融機関から融資を受ける際に有利になることです。

今回は社会福祉法人で税理士に協力して貰いながら資金調達を依頼する際の注意点やメリットについて解説します。

法令上の注意点

融資の仲介、斡旋を、事業として行うには「貸金業登録」が必要です。

金融庁は、契約締結の勧誘・契約の勧誘を目的とした商品の説明・契約締結に向けた条件の交渉を原則として金銭の貸借の媒介と説明しています。

税理士が、無登録でこのような行為をすることは違法行為となる恐れがあります。

また、経営者に代わって弁護士以外の人間が銀行と直接融資の交渉をすることは、非弁行為となる恐れもあります。

資金調達の前提として、一般の税理士は、決算書の信頼性の向上と決算書を説明する立場であることをご理解下さい。

1.会計基準の違いの説明が必要

社会福祉法人は、会計基準が企業会計とは異なり社会福祉法人会計です。

銀行は、企業会計を前提として融資を行いますので、銀行の担当者は会計基準の異なる決算書に戸惑います。

筆者が、社会福祉法人の経理課長や経理部長だった頃も、銀行の担当者が変わる度に、会計基準の違いについて毎回質問を受けました。

会計基準の違いを理解していて、説明できる税理士が資金調達を手伝ってくれることは、法人にとって助けになることは間違いありません。

2.つなぎ資金が必要

社会福祉法人は、補助金や助成金で成り立っています。

一般的に施設の建築は、施設整備補助金と自己資金で行うことが多く、施設整備補助金は一度に数億円規模の入金があります。

しかし、補助金はその性質上、建築の確認後に入金されるのが一般的です。

したがって、建設前の支払いはつなぎの資金調達をする必要があります。

資金調達には、理事会の議事録、予算書、補助金申請書、建築契約書、など様々な資料が必要です。

会計業務や税務申告を行っている税理士は、日ごろの会計情報を把握していますし、会計処理や税務処理のために上記の資料を必要とします。もし、事前の動きである資金調達に参加ができて助言できるなら、業務効率向上の観点で、税理士にも社会福祉法人にもお互いにメリットがあります。

3.新規施設開設の資金が必要

社会福祉法人で施設を新規開設することは、よくあります。

当然、事業開始前にお金は必要ですし、事業開始後に収入が入ってくるのは翌月以降です。したがって、開設時点では支払ができず、何らかの資金の手当てが必要になります。

本部に潤沢な資金があれば、資金を手当てできますが、そのような法人は少ないので、資金調達が必要となります。

この場合は、運転資金として資金調達することになります。

繰入の制度を守りながら手当てできる金額が内部にどの程度あって、どの位の金額を、どの様な返済方法で資金調達を行うべきか、税理士なら法人にとって良い方法を提案してくれます。

4.賞与資金が必要

社会福祉法人は、多額の公金が入ることから、株式会社の様に自由に資金を使うことができません。通常公金は、拠点単位で入金され、拠点単位で使途を管理されます。

賞与も多額の資金を必要としますが、拠点単位でお財布が分かれてしまっているため、お金があるところから払うという運用ができません。

また、赤字の拠点は資金不足になりがちですが、通常、賞与規程は拠点単位でなく法人単位で作成されますので、赤字だから全く払わないというわけにもいきません。

したがって、本部が資金調達をして、資金不足の補いながら、制度の範囲で全体の資金繰りをコントロールする必要があります。

この場合は、短期の賞与資金として資金調達することになります。

借入は理事会決議が必要です、どこの拠点で、幾らをどのくらいの期間で借りるのが良いか、税理士なら良い方法を提案してくれます。

5.決済資金が必要

社会福祉法人は、独特の規制として、年度精算義務規定というのがあります。

制度上区分された拠点は、公金を受け入れる性格から、自由に他の拠点にお金を移すことができません。

一方、社会福祉法人は民間の事業者として事業を行っているため、業績により黒字になったり赤字になったりします。 全ての拠点が黒字で、潤沢な資金があれば問題ありませんが、そのような法人はほとんどありません。

3月31日の年度末は、拠点間で一時的に貸し借りしていた債権と債務を精算しなければなりません。

精算できない場合は、資金調達が必要です。

この場合の資金調達は決済資金として資金調達することになります。

決算日の翌日は、年度精算義務が外れますので、返済することができます。

税理士なら、当座貸越契約など法人にとって、負担の少ない方法を提案してくれます。

まとめ

社会福祉法人にとって資金調達は、内部的資金調達と外部的資金調達があります。

借入は理事会議案の議決が必要です。予算書にも計上しなければなりません。資金調達に税理士が関与することは、社会福祉法人にとって力になることは間違いありません。

今回のお話をまとめますと、

(1)金融機関に社会福祉法人会計基準の違いを説明するために税理士の力を借りたいです。

(2)社会福祉法人は補助金のつなぎ資金が必要なので独特の資金需要を理解している税理士の力を借りたいです。

(3)新規施設開設の際は、制度の範囲で資金を集めないといけないので税理士の力を借りたいです。

(4)社会福祉法人は制度的にお財布が分ており、賞与資金をコントロールするために税理士の力を借りたいです。

(5)社会福祉法人は制度上年度精算義務があるため、資金を決済するために税理士力を借りたいです。

注意点とすると、税理士なら誰でも力になれるわけではないという点です。

社会福祉法人の制度を理解していてる必要があるためです。

また、資金調達の支援業務は一般的な顧問契約の範囲にはありませんので、個別に相談する必要があります。

追加的な費用を削減する方法は、基本的な動きは法人内で行い、資金調達の種類ごとに、チエックや助言を税理士に行ってもらう方法がお勧めです。丸投げはNGです。

士業は「お任せしか許されない。何も言わなくてもやってくれる。何か言ってはいけない。何をやっているのか分からない。」そのようは話をよく聞きますが誤解です。

士業は使い方がポイントで、何も言わないのは法人側のリスクです。

自法人のニーズ(やってもらいたいこと)を伝え、それをどこまでの範囲ならできるのか、幾らでやってもらえるか、法人から税理士にボールを投げてみましょう。お互いに明確にしながら進めるのが健全でお勧めです。