社会福祉法人における税金・税制のメリット3選

社会福祉法人における税金・税制のメリット3選

社会福祉法人は非課税法人と言われるだけあって、多くの税制優遇を受けています。

よく株式会社と比べられますが、NPO法人など他の公益法人等に比べて有利な規定もあります。

今回は、その中で筆者が特に恵まれていると感じた3つの規定について理由を添えて紹介します。

登録免許税非課税規定

社会福祉法人は不動産登記の際の登録免許税は、所轄庁が発行する事業共用証明書(いわゆる非課税証明書)があれば非課税にできます。

この規定自体はそれほど恵まれていると感じないかもしれませんが、実は社会福祉法人独特のルールとリンクしていて優位性があります。

社会福祉法人の不動産は多くの場合、基本財産になっています。そして基本財産は根抵当権の設定が認められません。

社会福祉法人といっても、銀行から融資を受けることはあり、基本財産を担保にすることはありえます。

例えば、毎年のように賞与資金や決済資金(つなぎ融資)を借りる必要がある法人が、銀行から担保を求められて基本財産を提供する場合、その都度抵当権を設定して債務額の1,000分の4の登録免許税が免除されることになります。

融資額は比較的金額が大きくなる傾向があり、何度設定しても非課税ですので累計するとかなり恵まれた有利な規定と言えます。

根抵当の担保設定が禁止されているが故にメリットが強調される規定です。

医療保健業非課税規定

法人税法の論点です。

社会福祉法人は34種類の収益事業を行う場合に納税義務があることはご存じかと思います。これが一段階目の優遇です。

社会福祉法人は、課税の対象となる収益事業の医療保健業を行ったとしても非課税になるという特別な規定があります。これが二段階目の優遇です。

社会福祉法人が営む介護保険法に基づく高齢者事業や、いわゆる総合支援法に基づく障害福祉事業は、医療保健業が多いという実態があります。

そうなると、同じ高齢者事業や障害福祉事業を行ったとしても社会福祉法人は非課税で、NPO法人は課税ということになります。

或いは、社会福祉事業で病院経営を行っていたり、公益事業でクリニック経営を行っている社会福祉法人もありますが、この規定により全て非課税となります。一方で、医療法人で病院経営を行っている法人や、個人事業でクリニックを行っている医師は課税ということになります。

この二段階目の優遇規定があるかないかは、社会福祉法人の納税額を大きく変える恵まれた有利な規定と言えます。

都道府県民税非課税規定

地方税の論点です。

株式会社の場合、赤字でも均等割りはかかりますという話を聞いたことはあると思います。

社会福祉法人の場合、収益事業を行っていない場合は、均等割りも法人税割も一切かかりません。これが一段階目の優遇です。

さらに、収益事業の所得の90%以上を本業である社会福祉事業に充てている場合は、どんなに黒字であっても課税されません。これが二段階目の優遇です。

しかも本業に充てているというのは、外部に支出しなくてもよく、法人内の内部取引で良いので、外形的には経費の証明要素の観点で非常に珍しく、とても有利な規定と言えます。

まとめ

あって良かった恵まれた規定をピックアップしてみました。

(1)登録免許税の非課税規定は、資金力が乏しく銀行に融資を頼らなければいけない法人にとってありがたい規定です。

(2)医療保健業非課税規定は、高齢者施設・障害者施設、病院経営などの多くの収益を非課税にする力を持っていますので、非常に恵まれた規定です。

(3)都道府県民税非課税規定は、どんなに収益事業が黒字でも内部取引だけで非課税にできる非常に恵まれた規定です。

法令は有利な規定を使わないことができるため、使える規定を知っていないと使えませんし、有利な規定を最大限活用しないと結果的にその法人は損をすることになります。

ただし、税金を減らすために要件を満たすことに尽力し過ぎて、法人にとって都合の悪い状況になることもありますので、表面的な損得でなく、その法人に合う・合わないという観点での取捨選択を心掛けることをお勧めします。

自法人で適切な判断をするための情報収集のコストは甚大です。その法人の状況にもよりますが、たいていの場合、節税金額より税理士に払うコストの方が安いです。その際、業界の知見のある信頼できる税理士の力を借りるのがポイントです。

社会福祉法人も物価高等で経営が厳しくなっています。節税と合理化という観点で、他法人に対して利用者への貢献度合いを高める競争力を手に入れ、生き残りに貢献する情報を獲得して下さい。