社会福祉法人と税理士が結ぶ顧問契約の内容はどのようなものがありますか?
社会福祉法人は原則的には非課税法人ですので税理士と顧問契約をしていない法人も多数あります。一方、税理士の力を借りる必要性が生じた場合に、どのような契約の可能性があるか全く分からないという方も多いのではないでしょうか?
今回は、会計事務所が社会福祉法人と契約する場合にどのような可能性があるのか?
一般的にありうる契約内容を紹介します。

目次
アドバイザリー系の業務
定期面談や質問対応など社会福祉法人の疑問や対応方法をお伝えする業務です。
完全自計化している法人に向いており、顧問料は抑えられます。
メリットとしては、相談は自己紹介や事例の前提などいちいち説明しなければなりませんが、顧問税理士なら前提の説明は把握しており、即座に回答できるため、お互いに時間短縮ができることです。
基本的には自分たちでやりたいので、コストを抑えて、困った時だけ助けて欲しい法人に向いています。
この契約は、適正価格で、自法人の業務内容(保育・障害・高齢者など)にあった高スキルの税理士を見つけることがポイントです。

チェック系の業務
月次チェックや決算書チェ
ックなど点検をして問題がある個所をレポートする業務です。消費税や法人税など申告書が必要な法人の申告書のレビューだけならこの領域です。
こちらも自計化している法人に向いているサービスで、比較的安い報酬で実現できます。
メリットとすると、自法人では気が付かない他法人のやり方や複数の分析方法でチェックしますので、点検の無い法人より確実に精度はあがりますので、プレ監査的な意味やセカンドオピニオンで活用したい法人に向いています。
こちらも、適正価格で、点検スキルの高い税理士を見つけることがポイントです。
記帳代行系の業務
いわゆる仕訳入力を委託する業務です。値段設定は仕訳単位になりますので、1仕訳〇〇円とか、月100仕訳まで1万円で追加分〇〇円のような報酬体系が多いです。
社会福祉法人会計は企業会計よりも仕訳が複雑なのと、会計ソフトが企業会計版は使えないので単価が上がる傾向があります。
社会福祉法人は、企業会計と違い、内部取引が複雑で配賦や資金使途制限等があり、取引前に運用の意思決定に関与せざるを得ないので、記帳代行を引き受けない方針の会計事務所も多いです。
事後処理が許される(まとめて数か月分入力できる)企業会計の感覚で引き受けると、高い確率で失敗します。
法人側のメリットとすると、経理の職員がいなくても業務が成立し、記帳代行に費やす時間を本業に向けられます。使用する会計ソフトに互換性があり、証憑や仕訳に必要な情報共有が合理的にできればお互いにとってメリットがあります。
社会福祉法人会計は企業会計のように簡単ではありません。こちらの契約も、適正価格で、正しく帳簿を作成できる実績のある税理士を見つけることがポイントです。

環境設定や調査業務
どちらかというとスポット業務として引き受ける場合が多い業務で、会計ソフトの販売やレンタル、導入支援、ソフトの操作方法の指導など経理の環境を構築する業務です。
特に制度改正時や、会計事務所を変更する時に必要になることが多いです。
他には、資産管理系のソフトや債権や負債の管理の業務を行う場合もありますし、人的環境を整えるために、経理職員の面接など採用の支援業務を行うこともあります。
過去の決算書の誤りのような顕在化してしまった問題に対する調査や報告業務もこちらに入ります。
顧問税理士にお願いできれば理想的ですが、定例業務以外は対応できない可能性が高いので、対応の可能性のある税理士を事前に探しておき、情報収集しておくのがポイントです。
帳票作成系の業務
決算書や附属明細書を会計事務所が作成する業務です。
日々の仕訳はある程度入力できるが、決算整理仕訳は分からないとか注記の書き方が分からないとか専門的な部分を委託しますので、経理の知識に自信のない法人に向いています。
記帳は法人で行っている場合に、もし、決算整理で期中仕訳の修正が必要な法人は別契約が必要になりますし、帳票は会計ソフトから出力しますので、会計事務所側が会計ソフトにアクセスできる必要があります。
記帳は自法人で行い、帳票作成業務だけ引き受けてくれれば、報酬の削減ができます。社会福祉法人会計は特殊ですので、法人内に経理に明るい方がいない法人は、決算書の作成委託はメリットがあります。
会計事務所側が記帳や点検をしていない場合は、日頃の情報がないため、会計事務所側の決算書作成作業の難易度が上がります。こちらの契約も、適正価格で、正しく決算書を作成できる税理士を見つけることがポイントです。

申告業務
社会福祉法人は源泉所得税以外は非課税という法人も多いですが、消費税、法人税、住民税、事業税、固定資産税、源泉所得税の申告や納付を行う場合の業務です。固定資産税と源泉税は自法人で行い、消費税と法人税だけ会計事務所に委託しているなどアレンジをしている法人も多いです。
社会福祉法人は税制も特殊です。申告業務は、消費税の原則課税や法人税の収益事業課税など複雑な税務判断が必要な法人は税理士に委託するメリットはあります。
こちらの業務も、適正価格で、社会福祉法人特有の税制を理解している税理士を探すことがポイントです。
行政への申請・報告業務
現況報告(財務諸表等開示システム)や、法人調査書、施設調査書、消費税の使途報告、保育園の事前協議書や収支計算分析表など、所轄の自治体に提出する書類の作成する業務で基本的には行政書士業務となります。
税理士資格を有する者は、行政書士登録ができますので、登録税理士に依頼できます。なお、2026年1月より行政書士法が改正され、有償での相談やデータ作成指導も行政書士業務とされましたので、今までのように無資格者がデータを作成してクライアントが提出するという業務形態ができなくなりますので注意が必要です。
会計に関する業務を全く行っていない社会福祉法人は、転記することができないので委託するメリットがあります。
こちらの業務は通常は会計事務所は対応できませんので、適正価格で、引き受けてくれる専門の税理士を探すのがポイントです。

ティーチング・コーチング業務
従業員に対する会計の研修や法人内の会議に出席して会計報告をしたり、対処方法を提案したりする業務です。
資金繰り支援、財務分析やアクションプランの提案もこの領域です。
専門家でしか分からない知識や、法人の中にいては分からない情報がありますので、客観的な視点て行うことにメリットがあります。
こちらの業務は税理士でなくても構いませんので、必要に応じて、幅広く探すのがポイントです。
立ち合い業務
社会福祉法人は指導監査が定期的に入りますし、時々税務調査もありますので、立ち会うことがあります。
税務調査は税理士しか行うことができませんし、会計業務を委託している法人は自治体からも指導監査の立ち合いを要請されることがあります。
会計監査人監査が必要な特定社会福祉法人は、この監査の立ち合いも要請されることがあります。
立ち合いがあった場合は、1回(日)につき〇万円などを契約書に入れることが多いです。
必要に応じて要請するスポット業務と考えて良いと思います。
立ち合いに慣れている税理士は、対処方法を知っていますので、委託するメリットはあります。
適正価格で、実績があり、信頼できる税理士を見つけることがポイントになります。

まとめ
社会福祉法人が税理士と顧問契約をする場合の内容について解説してきました。
社会福祉法人と税理士の契約には、日々の相談から、高度な税務判断、行政への報告支援まで多岐にわたる選択肢があります。
法人の必要性に応じて記載の内容を組み合わせる形になりますが、規模が大きい法人は一部分の部分的な契約、規模が小さい法人は全ての項目を契約に取り込む傾向があります。
(1)アドバイザリー系の契約は自計化している法人に向いており、顧問料を押さえられます。
(2)チェック系の業務も自計化している法人向きで、プレ監査やセカンドオピニオン的な意味合いが期待できます。
(3)記帳代行系の業務は、法人内に経理の知識がある職員がいない法人に向いています。報酬は高くなる傾向にあり、会計ソフトの互換性や仕訳に必要な情報共有がポイントになります。
(4)環境設定や調査業務は、会計ソフトの販売や操作指導など、経理の環境を構築する業務で、制度改正時などに必要になります。過去の決算書の再点検など臨時的な調査や報告を行う業務もあります。
(5)帳票作成系の業務は、決算書や附属明細書を作成してもらう業務で、この業務だけの場合、日頃の情報がないため、会計事務所側の難易度は上がりますが、実現できればお互いにメリットが望めます。
(6)申告業務は、高度な税務判断が必要な法人は必要ですが、原則非課税の社会福祉法人は申告自体が必要ない領域が多いので完全自計化できるケースもあります。
(7)行政への申請・報告業務は、基本的には行政書士業務で行政書士登録をしている税理士に依頼できます。自計化できていない法人は会計情報の転記ができないので委託する必要がありますが、コンサルやアドバイザリーを受けて一度経験すれば、高度な知識は必要ないので内製化できる可能性は十分にあります。2026年1月施行の行政書士法改正により、グレーゾーンの無資格者業務は禁止されましたので注意が必要です。
(8)ティーチング・コーチング業務は、自法人では対応ができない部分を委託する法人が多いです。道筋ができれば、ある程度自法人でも対応できます。税理士である必要はないので、幅広く検討するのがポイントです。
(9)指導監査や税務調査の立ち合い業務は、必要に応じて行うスポット業務扱いで、1回(日)につき〇万円と契約書に入れることが多いです。税理士である必要がある場合と、そうでない場合があります。
社会福祉法人と税理士の顧問契約について可能性のある内容を解説してきました。
医師に診察科目があるように、税理士にも得意不得意がありますので、法人が期待する業務によって、選ぶべき税理士は変わります。また、価格は安い方が良いに決まっていますが、同じ品質でないことに注意する必要があります。どの業界にも相場はあり、税理士業界であってもバリューフォーマネーの傾向はあります。相場を逸脱した期待はお勧めしません。
当事務所は社会法人専門の税理士ですので、ほとんどの業務に対応できます。無料相談だけのご利用も可能ですので会計事務所との関係でお悩みの法人は、お気軽にご相談下さい。
