社会福祉法人が寄附を受けた場合又は寄附を行った場合の注意点
社会福祉法人は制度上、寄附を受けることにより元手部分である事業基盤が成り立つという仕組みになっていますが、寄附を受けた際に注意すべき点があります。
また、社会福祉法人は原則として法人の外部に寄附することはできませんが、内部取引によるみなし寄附制度がありますし、災害時には被災地に義援金の支出が認められる場合もあります。
「寄附を受けたが、会計処理はどうすればいい?」「災害義援金は支出しても大丈夫?」といった疑問をお持ちの社会福祉法人の方々も多いのではないでしょうか。
本記事では、社会福祉法人が寄附を「受ける場合」と「行う場合」の両面から、実務上の注意点を分かりやすく解説します。
目次
社会福祉法人が寄附を受けた場合の注意点

まず、社会福祉法人会計基準の第6条に「基本金には、社会福祉法人が事業開始等に当たって財源として受け入れた寄附金を計上するものとする。」とありますので、社会福祉法人は寄附金が制度の基盤を構成する重要な要素であることが分かります。
手続き上の注意点は、「社会福祉法人会計基準の運用上の留意事項」の9に、寄附金及び寄附物品を収受した場合においては、寄附者から寄附申込書を受けることとし、寄附金収益明細書(運用上の取扱い別紙3②)を作成し、寄附者、寄附目的、寄附金額等を記載することとする。 とありますので申込書が必要です。
また、モデル定款の理事長専決事項に、寄附金の受入れに関する決定(ただし、寄附金の募集に関する事項及び法人運営に重大な影響があるものを除く。)とありますので稟議書で理事長の決裁が必要です。
また寄附を募ることについて以前は許可制でしたが、現在は規制が大幅に緩和され、以前より柔軟な運用が可能となりました。しかし、寄附の募集は、専決権から外されていますので、理事会の決議が必要です。
金銭で寄附を受けた場合の注意点
金銭で寄附を受けた場合は、寄附目的により拠点区分の帰属を決定し、当該拠点区分の資金収支計算書の経常経費寄附金収入又は施設整備等寄附金収入として計上し、併せて事業活動計算書の経常経費寄附金収益又は施設整備等寄附金収益として計上します。
当然、資金収支計算書と事業活動計算書の各科目は受入れ金額で一致します。
金銭受入れの悩むポイントは、法人主催の式典などのお祝い金です。寄附として受け入れる場合は、当初から寄附として受け入れる旨を参加者に伝えているケースや、参加者に寄附の意思を確認するケースで、受け入れ稟議と領収書の発行を行い、寄附金台帳に載せる必要がありますので事前準備が必要です。参加者が寄附でなくお祝いという意思で領収書を希望されない場合は雑収益として受け入れるのが一般的です。この場合、指導検査で出席表や祝儀袋を確認される場合がありますので、しばらく保管するようにして下さい。

物品で寄附を受けた場合の注意点
(1)取得時の時価で受け入れなければならないので、客観的な査定が必要になります。
(2)経常経費の寄附物品は金銭同様の収益科目を使用します。
(3)土地などの支払資金の増減に影響しない寄附物品は固定資産受贈益を計上し資金収支計算書には計上しません。したがって、事業活動計算書と資金収支計算書が一致しない珍しい取引になります。
事業活動計算書には「固定資産受贈益」として収益計上されますが、資金収支計算書には収入計上されません。そのため、両計算書を照合した際に差異が生じますが、これは会計基準に基づいた正当な処理です。
また、寄附金の科目でない固定資産受贈益であっても附属明細書の寄附金収益明細書の区分欄に「固定」として記載する必要がありますので、注意が必要です。
(4)例えば、善意銀行からのアイスクリームの寄附など飲食物などで、社会通念上寄附金として取り扱うことが不適当なものは会計処理としては寄附金収益として計上しません。消費期限が短く即時に消費されるものは、実務上の簡便性を考慮し、会計処理を要しないとされているためです。

社会福祉法人が寄附を行う場合の注意点
社会福祉法人は自己の資金を法人外に流出することは認められていませんし、法人外への金銭の貸付も認められていません。したがって、原則として、反対給付の伴わない事業関連性の無い寄附金は認められていません。 しかし、一定の場合は例外的に認められます。
被災地への災害義援金
東日本大震災の際に平成23年4月28日、初めて「東日本大震災に対し社会福祉法人が寄附金(義援金)を支出することについての特例について」という通知が出され、社会福祉法人が一定の場合に寄附ができることが分かりましたが、高齢者施設など限定的なものでした。
その後、対象範囲が拡大され、令和6年1月12日の「令和6年能登半島地震による被害に対し 社会福祉法人が寄附金(義援金)を支出することについての 特例について」保育も含めて社会福祉法人全般において寄附ができることが分かりました。ただし、支出にあたっては理事会の決議や、所轄庁への事前相談(報告)が必要となる場合があるため、もし実施する場合は、実施前に通知内容を確認しましょう。
参考:東京都社会福祉協議会「相談室だより(災害義援金について)」

みなし寄附
法人税法の論点です。法人税法上の収益事業から非収益事業へ繰入れた金額は内部取引であるにも関わらず外部に寄附したのと同様に寄附金とみなし、課税所得を減額する効果があります。結果的に収益事業部門の税金が減ることになります。 みなし寄附は、外部に資金が流出するものでないため、制度で禁止されている寄附金でなく、税金の計算上寄附金の規定を準用しているだけで、取引の本質は内部取引です。
地域における公益的な取組み
改正社会福祉法第24条2項により、「日常生活又は社会生活上の支援を必要とする者に対して、無料又は低額な料金で、福祉サービスを積極的に提供するよう努めなければならない」として地域における公益的な取組みが義務付けられました。無償や低額譲渡の場合、株式会社の場合は寄附金として処理されますが、社会福祉法人の場合、社会福祉事業又は公益事業の一環として事業費として処理され寄附金支出として扱いません。

まとめ:適正な寄附管理は指導検査対策の第一歩
社会福祉法人は寄附金が経営基盤の源であり、原則として理事長の専決事項ですが、募集を伴う場合などは理事会決議が必要で、寄附金処理は、その種類や目的によって会計上の取り扱いが大きく異なります。
社会福祉法人が寄附を受け入れた場合の注意点
| 受入項目 | 事業活動計算書(収益) | 資金収支計算書(収入) | 備考 |
| 金銭寄附 | 寄附金収益 | 寄附金収入 | 受入れ金額で一致 |
| 物品寄附 | 寄附金収益 | 寄附金収入 | 取得時の時価で一致 |
| 固定資産 | 固定資産受贈益 | ー | 帳票間で科目不一致 |
| 飲食物等 | ー | ー | 会計処理不要 |
(1)金銭で受け入れた場合は、目的により、経常経費寄附金収益又は施設整備等寄附金収益になります。
(2)物品寄附は時価により受け入れます。
(3)土地などの固定資産を受け入れた場合は、固定資産受贈益を計上し資金収支計算書には計上しません。したがって、拠点区分の事業活動計算書と資金収支計算書の寄附金は一致しなくなります。
(4)飲食物など、社会通念上寄附金として取り扱うことが不適当なものは寄附金収益として計上しません。

社会福祉法人は原則として法人外に寄附(法人外部への資金流出)をすることができません。一定の場合に寄附を行うことができますが、以下の注意が必要です。
(1)東日本大震災以降、指定された災害の場合、所轄庁と協議して被災地に義援金を贈ることができるようになりました。
(2)税制優遇措置として法人内部の取引を外部への寄附金とみなして、課税所得を減らすことができます。取引の本質は内部取引です。
(3)制度改正により、地域における公益的な取組みが義務付けられ、社会福祉事業又は公益事業として、無償又は低額によりサービスを提供することができるようになりました。実質的には外部への利益供与に見えますが、法人の本来目的たる事業費として処理します。
社会福祉法人の寄附について解説してきました。指導検査では、寄附金台帳や領収書、さらには祝儀袋の保管状況まで細かく見られることがあります。「お祝いをいただいたがどう処理すべきか?」「この支出は認められるか?」といった判断に迷うケースは非常に多いのが実情です。
当事務所は、社会福祉法人特有の複雑な寄附処理について、豊富な経験に基づいた適切なアドバイスが可能です。寄附金の取り扱いでお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
